シベリアで巨大クレーター続々、成因に新説

ph_thumb.jpg シベリアで昨年7月、巨大な謎の穴が見つかりました。SNSでは隕石だミサイルだと憶測が飛び交いましたが、最もうなずける原因は、地球温暖化で融解したメタンハイドレートの爆発。メタンハイドレートとは、北極地方の凍土中に存在する、メタンと水からできた氷状の物質です。【謎のクレーターに下りるロシアの科学者。2014年11月、シベリアにて撮影。以降、続々と穴が見つかっている。提供:VLADIMIR PUSHKAREV、THE SIBERIAN TIMES】

 ところが、その説に疑問が生じています。ロシアの研究者が人工衛星による調査を行い、シベリアにさらに多くのクレーターを発見したのです。

 米国地質調査所のガスハイドレート・プロジェクトでチーフを務めるキャロリン・ラッペルは、クレーターの原因について「断定はされていません」と述べました。しかし、彼女を含む複数の科学者は、衛星画像から新たな説を見出しました。ピンゴと呼ばれる地中の氷塊が急速に解け出したことが関係しているのではないか というのです。ピンゴとは、長い時間をかけて地表近くに形成された氷の塊で、見た目は小高い丘のようになっています。

 シベリアでは昨年、気温が異常に上がり、多くの氷が解けました。氷の塊が急速に解ければ、地面の一部が落下してクレーターができてもおかしくありません。しかし、何らかの爆発がなければ、クレーターの縁周辺に岩がいくつも放出されていたことが説明できません。

 それについてラッペルは、永久凍土中にありながらピンゴの重みで押さえつけられていた天然ガスが、ピンゴの融解により急激に放出されたという説を唱えて います。この説は、過去の衛星データからも裏付けられます。クレーターが形成された場所を調べると、まったく同じ位置に、小高い丘のようなピンゴが確認できる のです。

 シベリアやアラスカ北部には、たくさんのピンゴがあります。そのため、地球温暖化が続けば、さらにクレーターが増えるリスクがあると、ラッペルは警鐘を鳴らします。

 先週まで、発見されていたクレーターは3つだけでした。11月にロシア北極圏探査センターの科学者らがそのうちの1つを探索したところ、深さは16.5mでした。

 しかし、続々と穴が発見されたことを受け、モスクワを拠点とする科学者、バシリー・ボゴヤブレンスキーは、安全上の懸念から、緊急調査の必要性を訴えています。石油・ガス生産が行われているシベリア北部のヤマル半島は、このクレーター群からそう離れていないからです。

 ロシア石油ガス研究所の副所長でもあるボゴヤブレンスキーは、人工衛星によって少なくとも7つのクレーターが確認されたと発表しました。そのうちの1つは特に大きく、20個ほどの小さなクレーターに囲まれているといいます。以前から見つかっていたクレーターのうち2つは、水が溜まって湖になっています。

 昨夏ドイツの科学者が、シベリアにできたクレーターについて、メタンハイドレートが解けて爆発に至ったのが原因とする説を発表しました。しかしラッペルは、 メタンハイドレートが存在するのは深さ220メートル以上の永久凍土中であるが、これまでに発見されたクレーター(深さ約15m)はすべて、それよりずっ と浅い場所に形成されていると指摘します。

ナショナルジオグラフィック

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