経済産業省は、新設する火力発電所に対し、省エネ規制を導入します。CO2排出量の少ない発電効率の高い設備の設置を義務付けます。電力小売り自由化に向け、CO2排出量の多い石炭火力発電所が急増するのを防ぐ狙いです。新規制で石炭火力の発電コストは上がり、家庭の電気料金の上昇要因になる可能性もあります。
経産省は省エネルギー法の告示を年内にも変えます。火力発電所の設備に石炭など燃料の発電効率の基準を設け、基準以上の設備の設置を義務付けます。違反した場合は勧告し、罰金を科します。
対象は新たに建設する火力発電所で、建て替えも含まれます。建設済みの設備は対象外になりそうです。発電効率が高ければCO2排出量を抑制できます。
現在、火力発電所は出力11万2500キロワット以上の発電所に限りCO2排出量などを調べる環境影響評価(アセスメント)があります。影響が大きければ、事業者は建設中止を政府から求められます。小型の発電所はアセスを実施する必要がなく、短期間で建設できます。
原子力発電所の運転停止による電力需給の逼迫を受け、2013年に政府はCO2排出が多いため新設を認めていなかった石炭火力発電所の建設を認める方針に転じました。これを受け、小型の石炭火力発電所の建設計画が急増しています。NPO法人気候ネットワークによると、現在、石炭火力の建設計画は約40件あり、約1500万キロワットと原発15基分に相当します。小型が半数近くを占めています。
16年の電力小売り全面自由化を前に安価な電源を確保しようと、電力、ガス会社、商社などが石炭火力発電所の建設に動いています。石炭火力は液化天然ガス(LNG)の火力発電所より初期投資や運転経費が安いのです。
新たに省エネ規制ができれば発電事業者は設備の高性能化を求められます。新規制をすでにある建設計画に適用するかどうかは不透明ですが、石炭火力発電所の建設コストが上昇し、建設計画の増加が一服する可能性があります。
世界各国は11月にパリで第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)を開き、新たな温暖化対策の枠組みの合意を目指しています。新たなCO2 排出量の削減目標を欧州連合(EU)や米国、中国が示す中、日本にも明確な温暖化対策を示すよう求める声が強まっています。
東京電力福島第1原発の事故以降に原発の停止で火力発電所の稼働率が高まり、CO2などの温暖化ガスの排出量が増えています。13年度の排出量(CO2換算)は過去最大の13億9500万トンで、京都議定書の基準年となる1990年度に比べ10.6%増えました。
(日本経済新聞)